マウス下垂体におけるメラニン細胞刺激ホルモン受容体mRNAの発現
Expression of melanocortin receptor mRNA in the mouse anterior pituitary gland.

 メラニン細胞刺激ホルモン(melanocyte-stimulating hormone:MSH)は、視床下部や下垂体中葉その他の末梢組織で産生され、内分泌的あるいは傍分泌的に多様な生理現象を調節する因子である。MSHには3タイプ(a, b, g)が知られ、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)と合わせてメラノコルチン(melanocortin)と総称されている。メラノコルチン受容体(melanocortin receptor:MC-R)には5種類のサブタイプ(MC1受容体〜MC5受容体)があり、哺乳類のさまざまな組織での発現が報告されている。ラットやマウスでは、a-MSHは前葉からのプロラクチン(PRL)分泌を刺激し(Hill et al.,1991)、さらにこのa-MSHの作用はマウスではMC3受容体を介していることが知られている(Morooka et al.,1998 )。しかしながら、前葉におけるMC3受容体の発現調節機構は不明である。そこで本研究では、マウス下垂体におけるMC3受容体の発現調節機構を明らかにすることを目的とし、ノーザン解析、in situ ハイブリダイゼーションによりMC3受容体mRNAの発現を調べた。  <材料と方法> ノーザン解析 2-3 ケ月齢のICR系マウスの雄、発情間期の雌、哺乳中の雌(出産後5日目)の各下垂体前葉と視床下部から、全RNA及びpoly(A)+ RNAを抽出した。全RNAはSingle-Step Method (Chomczynski and Sacchi,1987)で抽出した。poly(A)+ RNAは、Oligo(dT) Celluloe Columns (Gibco BRL)を用いて全RNAから抽出した。プローブは、ICRマウスのゲノムDNAを鋳型としたPCRにより得たクローン(pcrmMC3)を、[a-32P] dCTP を用いて、ランダムプライム法により作製した。in situ ハイブリダイゼーション 2-3ケ月齢のICR系マウスの下垂体を4% paraformaldehydeで固定し、パラフィンで包埋した後、薄切 (5μm) した。プローブには、pcrmMC3をジゴキシゲニン (DIG) で標識したものを用いた。 in situ ハイブリダイゼーション後、抗マウスPRL抗体と抗ラットGH抗体を用いて、蛍光標識法によりPRL産生細胞とGH産生細胞の検出を行った。
 <結果と考察>ノーザン解析 雄、発情間期及び哺乳期の雌の下垂体前葉のRNAからMC3受容体mRNAと推定されるバンド (2.5Kb) が検出された。これは視床下部のMC3受容体mRNAとほぼ同じサイズであった。哺乳期の雌の下垂体におけるMC3受容体mRNAの発現量は、雄及び発情間期の雌と比べて高かった。 in situ ハイブリダイゼーション マウス下垂体前葉、中葉においてMC3受容体mRNAの発現が認められた。 前葉のMC3受容体mRNA発現細胞は、円形もしくは楕円形の形状を示し、それぞれ下垂体前葉に一様に分布していた。 MC3受容体mRNA発現細胞は、雄マウス下垂体前葉では26.1±3.2%、発情間期の雌では24.7±0.6%であった。また MC3受容体mRNAはほとんどのPRL産生細胞に発現していたが、GH産生細胞では一部の細胞にのみ発現していることがわかった。マウス下垂体前葉でのa-MSHによるPRL分泌調節はMC3受容体を介していることが知られている。したがってa-MSH は、 PRL産生細胞のMC3受容体に作用して、 PRL分泌を促進することがわかった。哺乳中雌マウスにおける下垂体前葉でのPRL分泌増加は、PRL産生細胞のMC3受容体mRNAの発現量の増加と密接な関係があることが示唆された。またGH産生細胞も a-MSHにより何らかの作用を受けていると考えられる。



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